選考委員からのメッセージ

葵せきな イラスト/狗神煌「マテリアルゴースト」で第十七回ファンタジア長編小説大賞佳作を受賞しデビュー。発表作品に「マテリアルゴースト」、「生徒会の一存」シリーズ。現在「ぼくのゆうしゃ」シリーズを執筆中。また、「ファンタジアBeyond」にて「ゲーマーズ!」を連載している。
選考委員としてどんな作品が読みたいですか。
「印象に残る場面」のある作品が読みたいですね。それは感動シーンでもバトルシーンでも伏線回収シーンでもいいのですが。「この作品の見せ場はこれだ!」という一場面はやはり欲しいです。歌で言うところの「サビ」ですね。時に、しっとりした特徴の無い名曲より、変なCMソングの方が耳に残っていたりするのと同じで。実際、それは選考の際は勿論ですが、いざ受賞し、本になって多くの人の目に触れることになった際にも、とても有用な武器になります。ただ間違わないで欲しいのは、何も「奇を衒え」と言っているわけじゃないということです。衝撃の展開やどんでん返しが全てじゃありません。「泣ける」でも「切ない」でも「熱い」でもいいので、とにかくその作品の本質を象徴するようなワンシーンが盛り込まれていると、個人的にはいいなと思います。まあ「俺の歌は全てがサビさ!」という意気込みの作品があっても、それはそれでいいのですが(笑)。
ほかの選考委員の先生への印象、お互いの強みについてどうお考えですか。
石踏さんは同期でずっと一緒にやってきた戦友さんですね。読者さんへのサービス精神が誰よりも高く、また「萌え」と「燃え」のバランス感覚が凄まじい人です。
橘さんは「デート・ア・ライブ」もそうなんですが、特に前作の「蒼穹のカルマ」などの印象から「本来ならとてつもなく突飛な複数の要素を、しかし最後は魔法のように綺麗に纏める作家さん」だと思っています。
ご自分が投稿されたときは、どんなことを意識していましたか?
序文から興味を持たせることと、一冊で物語として完結することでしょうか。
元々ウェブで小説を発表していましたが、そちらの「常に読者さんの興味を惹き続けること」重視のやり方に対し、応募作は決められたページ数で一つの物語にある程度の決着をみないといけないので、そこはどうしても意識させられました。
「受賞からデビューまで」と、「実際にデビューしてから」の出来事で、それぞれ特に印象に残ったこと、驚いたことはなんですか?
恥ずかしながら、受賞までは「誰かに指摘を受けて直す」という状況が無かったので、担当編集さんにアドバイスを受けながら作品をブラッシュアップする行為は新鮮でした。
逆にデビュー後は、商業媒体なので当然相応の責任は発生しますが、それでも基本はきちんと自分の書きたいものを書かせて貰えたので、思っていたよりも健全な環境に安堵しました(笑)。
作家になってよかったことはなんですか?
「俺作家だぜ」というドヤ感が出せることです。職業「作家」という肩書きの、なんかカコイイ感は尋常じゃありません。
冗談はさておき、やはり自分の文章にイラストがついたり、実際に本として完成した際の感動や達成感は今でも全く薄れませんし、更にそれを読んだ方からの好評を貰えたりした日には、一日中舞い上がれますよ。
作家をめざす方への、執筆に直結するアドバイスをお願いします。
最初から完璧な作品を意識しすぎて手が止まってしまうぐらいなら、まずは勢いで書いてしまって下さい。ブラッシュアップは後からいくらでも出来ますよ。
そして努力は大切ですが、あまりストイックになりすぎないで下さい。そもそも執筆が楽しくなくなってしまったら、元も子もありません。
作家をめざす方への、執筆に直結しないアドバイスをお願いします。
作家にとって「作家以外の人生経験」はとても貴重な糧となります。
ですから執筆のためとはいえ、今の仕事なり勉強なり、そういった本分の方を疎かにしすぎないことをオススメします。
ストーリーを作る上で、重要なことはなんですか。
とにかく「読者さんを置いていかない」ということですかね。主人公の目的にしろ世界観にしろ、読み手側が一度「もう分かんないや」というモードに入ってしまうと、その後にいくら感動的だったり衝撃的な場面があっても「ふーん」で済まされてしまいますから。
魅力的なキャラクターを作るためのポイントはなんですか。
物語の都合で著者に「喋らされている」部分に極力配慮することでしょうか。物語なのでそういう台詞が出て来ること自体は仕方ないですが、だったらせめて露骨に「定型文でござい」という台詞にするのではなく、多少なりともそのキャラらしさを加味して描くだけで、かなり読み味が違ってくると思います。
どんな時にアイディアが浮かんできますか。
ぼんやりしている時ですかね。散歩している時とか、駅での待ち時間だとか、風呂に入っている時だとか……無心になっているような状況ですね。逆にスマホいじったりゲームしたりで微妙に脳みそ使っている状況だと、妙案は浮かび辛い気がします。勿論、創作物からのインプットは欠かせないですけどね。
ファンタジア大賞&ファンタジア文庫はここがいいよ!というお勧めポイントがありましたら教えてください。
本当に懐が広い賞だと思います。昔ながらのハイファンタジーは勿論、現代学園ラブコメから、ホラーやミステリ風味まで。単純に面白ければどんな作風も積極的に受け容れてくれる素晴らしい賞です。カオスともいいますが(笑)。
また、受賞後は編集さん達も作者さんの長所こそを伸ばそうと親身に寄り添ってくれますので、安心してご応募下さい。
これからファンタジア大賞へ応募する方たちへ、メッセージをお願いします。
私自身含め、気合い入れて執筆しようとするとどうしても様々な要素をアレもコレもと詰めたくなってしまいます。が、読み手側は案外、シンプルだったり直球だったりする物語にこそ胸を打たれるものです。締切りや気持ちに余裕があればでいいので、是非「引き算」にも着目してみて下さい。
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石踏一榮 イラスト/みやま零「第17回ファンタジア長編小説大賞投稿作「電蜂 DENPACHI」にて特別賞を受賞しデビュー。現在、ファンタジア文庫より「ハイスクールD×D」シリーズを刊行中。また、「ファンタジアBeyond」にて「堕天の狗神―SLASHDØG―」を連載中。
選考委員としてどんな作品が読みたいですか。
ファンタジア文庫らしいファンタジー作品から、現代ものまで幅広く読みたいですね。やはり、魅力的な主人公とヒロインがきちんと活躍してくれる作品が読みたいです。王道な作品も突飛な作品も、最低限それらを踏まえた上で王道であり、突飛なのだと思います。一度、選考委員を務めさせていただいてわかったことは、投稿者の方々が、書きたいことをすべてさらけ出そうとして、テーマを複数にしようとしているように見受けられました。基本、テーマを絞った内容に、書きたいものを乗せていったほうが、バランスの良い作品になるのだと思います。次に流行を取り入れるかどうかということ。取り入れて、受賞して本に出す頃にはブームが去っているなんてことは、よくある話で、ラノベ業界は流行の移り変わりが特に顕著です。一年後に「今」流行っているジャンルがまだあるとは限りません。「俺(私)がブームを作りだしてやる!」ぐらいの気構えで、書いてください。そういう熱意のある作品をお待ちしております。
ほかの選考委員の先生への印象、お互いの強みについてどうお考えですか。
葵せきなさんは同年同日デビューの同期です。彼とは付き合いも長く、お互い切磋琢磨してここまで来ました。よきライバルであり、よき友人であり、よき目標です。
橘公司さんは富士見ファンタジア文庫の新鋭作家の中核です。とても研究熱心な作家さんでして、新しいものを次々と取り入れる姿勢は私も大変見習っております。
ご自分が投稿されたときは、どんなことを意識していましたか?
書きたいものがある、読ませたいものがある、という気持ちで出しました。
「受賞からデビューまで」と、「実際にデビューしてから」の出来事で、それぞれ特に印象に残ったこと、驚いたことはなんですか?
人と人との巡り会いの重要性です。最良のパートナーと組んだとき、仕事は充実しますし、何よりも良い作品が作れます。あと、最初に本が出来上がったときの感動は忘れられるものではありません。プロになった実感をあのときほど感じられる瞬間もないでしょう。ぜひ、皆さんも受賞して堪能してください。
驚いたことは……。毎年驚くことばかりが起きているので書き切れません(笑)。
作家になってよかったことはなんですか?
「ファンに喜んでもらえる本が作れたことでしょうか。ファンの心の一冊に入れてもらえるなら、書き手としてこれ以上の喜びはありません。
あと、有名な作家の先生や業界人とお酒を飲めるのも作家になって良かった点ですね。
作家をめざす方への、執筆に直結するアドバイスをお願いします。
作家は見て聞いて触ったものすべてが執筆に影響を与えると思ってます。そしてそれは作家にとって極当然のものですので、あえて付け加えるのであれば、一般的な常識も持ち合わせていただきたいかなと。本作りは人と人との協力プレイの末に誕生します。最低限の礼節は持たないといけません。コミュニケーション能力は最低限得ておきましょう。
作家をめざす方への、執筆に直結しないアドバイスをお願いします。
作家にとってはあらゆるものが執筆に直結すると思います。なので、あえてするのであれば、休めるときはきちんと休む、でしょうか。よく寝てよく食べてから書いた作品のほうがいいものに仕上がります。簡単そうに見えて案外できないことです。
ストーリーを作る上で、重要なことはなんですか。
WEB小説と違うのは、限られたページ数でキャラ、設定、物語を描いて1冊として完結させないといけないことです。とはいえ、限られたページ数ですので、複雑怪奇にしすぎてもいけませんし、シンプルすぎるのも読み手を退屈にさせます。王道ラブコメなら王道で安心できる展開を、ギャグのあるものなら斜め上のギャグ展開を目指し、バトルファンタジーならば読者が燃える戦闘シーンを用意しましょう。
魅力的なキャラクターを作るためのポイントはなんですか。
案外、各属性のヒロイン(脇役)を書ける方は多いです。ところが、読者の支持を集められる主人公を書ける方となると極端に少なくなります。ヒロインも大事ですが、それ以上に読者の共感を得られる主人公を創り出しましょう。いままで多くの読者に支持された主人公のいるラノベ、漫画、アニメ、なんでもいいですので「どこが支持されてたのか?」、多くを読んで徹底的に分析してください。
どんな時にアイディアが浮かんできますか。
一番脳内が動いているのは、他の作品を見ている、読んでいるときなのだと思います。漫画、アニメ、映画、テレビと、自分の感性を刺激する作品を目にしたとき、脳内で自分の物語のアイディアを構築し始めています。そうなると、映画を見ていながら、まったく頭に入らなくなる現象になってしまい、大変勿体ないことになってしまいますが(笑)。
ファンタジア大賞&ファンタジア文庫はここがいいよ!というお勧めポイントがありましたら教えてください。
ファンタジーものの老舗というイメージはあるかもしれませんが、葵せきなさんの「生徒会の一存」や橘公司さんの「デート・ア・ライブ」、私の「ハイスクールD×D」を見てわかるようにかなり柔軟に様々なジャンルを受け入れる土壌があり、人気作に育て上げる実績を持ったレーベルです。つまり、おもしろければ何でもこいという新人賞だと思いますので、投稿されたい方で自分の作風がいまいち判別できなかったら、とりあえず、ここに送ってみてください。 あと、他のレーベルで大活躍されている作家さんが意外にもここの新人賞出身ということが結構あります。きちんと才能を発掘してくれるという点が大きいと思います。
これからファンタジア大賞へ応募する方たちへ、メッセージをお願いします。
いろいろな方法で表現ができるようになった昨今、あえて小説の大賞に送り、受賞したいのであれば、WEB投稿サイトとは形態が違うことをまずはご理解ください。限られたページのなかでキャラクター、物語、設定を見せた上で1冊として完結させなければなりません。流行りだけじゃなく、自分だけの持ち味を私たち選考委員や編集部に見せてください。光る才能が見受けられれば、選考委員や編集部が拾い上げますので、おそれずにどんなジャンルでもチャレンジしてみてください!
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橘公司 イラスト/つなこ第20回ファンタジア長編小説大賞準入選作「蒼穹のカルマ」でデビュー。現在、「デート・ア・ライブ」を刊行中。
選考委員としてどんな作品が読みたいですか。
「驚かせて」ください。思いも寄らない設定でもぶっ飛んだキャラクターでも緻密な叙述トリックでもいいので、あっと言わせて欲しいです。もちろん「驚き」を作るためには、突飛な発想だけでは足りません。その渾身のアイディアをどう効果的に見せるかも重要になってきます。読みやすい文章やスムーズな展開の流れなど、何も知らない人に自分の話を読んでもらうということを意識するのはとても大切なことです。基礎を疎かにしては、一番読んでもらいたいシーンまで辿り着いてもらえないことさえあります。ですが忘れないでください。基礎を固めるのは、最高の一撃を放つためであると。発想は技術の裏打ちがなければ開花せずに終わりますが、技術はあくまで発想を形にするためのものです。強固に築かれた足場から放たれる、パワーのある一撃をお待ちしています。
ほかの選考委員の先生への印象、お互いの強みについてどうお考えですか。
葵さんは一つの新しい流れを作った開拓者だと思います。あの時代に「生徒会の一存」を作り上げた功績は計り知れません。軽快な語り口と読みやすさ、そしてちらりと覗く毒気が魅力だと思います。
石踏さんはむせ返るほどに熱い男の魂を持ったおっぱい(矛盾)。あらゆる意味で、読者の中にある少年の心を揺さぶるのが上手な作家さんだと思います。
ご自分が投稿されたときは、どんなことを意識していましたか?
投稿時代は、如何にして読む人の意表を突くかを考えていました。ちなみに最初は、空獣が登場するファンタジーな話と、サラリーマンが娘の授業参観に行く話の2つを考えていたのですが、どちらも少しパワー不足な気がしたので無理矢理合成しました。結果できあがったのが融合モンスター「蒼穹のカルマ」です。
お話が無個性に感じたら、他のお話と混ぜてみるのも一つの手かもしれません。
「受賞からデビューまで」と、「実際にデビューしてから」の出来事で、それぞれ特に印象に残ったこと、驚いたことはなんですか?
受賞からデビューまでで一番印象に残っているのは、初めてキャラクターのデザインをいただいたときのことです。あれは本当に感動です。頭の中にあった世界が、ぐんと広がるような感覚を覚えました。
デビューしてからとなると、やはりアニメ化でしょうか。編集さんにもよると思いますが、わりとさらっと告げられます。特にこれといった用事もないのに編集部に呼び出されたら怪しいです。
作家になってよかったことはなんですか?
たくさんの人に自分の書いたお話を読んでもらえるということ、そしてイラストレーターさんに始まり、マンガ家さんやアニメーターさん、ゲームクリエイターさんやフィギュアの原型師さんなど、様々な方に、自分の考えた世界やキャラクターを描いて、作っていただけることは、何物にも代えがたい喜びです。あとは平日の昼間からゴロゴロしててもなんとなく許されることです。
作家をめざす方への、執筆に直結するアドバイスをお願いします。
一つの手法、方法があったとして、人から教えられるのと、自分で気づくのでは、質が全く違います。執筆なんて、最初はなんだかよくわからない感覚の集積体です。書いてるうちに「もしかしてこうかな?」が生まれ、「あ、こうだ」に変わっていきます。その発見は、あなただけの宝物です。どうか「気づき」を大切に。
作家をめざす方への、執筆に直結しないアドバイスをお願いします。
同い年か年下で既にデビューしている人を見つけると、いい感じに嫉妬パワーが溜まってきます。こう、みぞおちのあたりに。ローコストで凄まじいエネルギーが得られますので、上手く燃料源にしましょう。そして、もしデビューしてその人に会う機会があったらきちんとお礼を言いましょう。
ストーリーを作る上で、重要なことはなんですか。
適度な安心感を意識することではないかと思います。奇抜な発想や設定は非常に重要ですが、それだけで話を埋めようとすると胸焼けを起こしてしまいます。人が興奮したり面白いと思ったりするポイントというのは、案外昔から変わっていないものです。話の核となるインパクトを生かすために、王道的な下地はある程度必要だと思います。
魅力的なキャラクターを作るためのポイントはなんですか。
自分の好きな要素と人に広く愛される要素のバランスを上手く取ることだと思います。前者が過ぎるとニッチになり、後者が過ぎると無個性になります。あとは話の中できちんと役割を持たせること、そしてなんと言っても、うちの子が世界で一番可愛いと心の底から思う親馬鹿になることです。
どんな時にアイディアが浮かんできますか。
パソコンの前に座っているとき、布団に入っているとき、歩いているとき……と、様々なパターンがありますが、もし可能ならば人と会話することをお勧めします。アドバイスをくれる人が理想的ですが、ただ聞いてもらうだけでも、他人に自分の考えを伝えようとすることで、思考が整理され、新しい道が見つかったりします。
ファンタジア大賞&ファンタジア文庫はここがいいよ!というお勧めポイントがありましたら教えてください。
歴史の長いレーベルなので、様々なノウハウを持っており、作家の面倒見もよいと思います。読者の年代も幅広いため、多様なジャンルを受け入れてくれる土壌があります。 大賞のシステムで言うと、テキストデータでの応募ができるというのは大きなメリットだと思います。このお手軽感は馬鹿にできません。ギリギリまで改稿できるし。締め切り当日に印刷しようとしたらインクが切れてて半泣きとかないし。郵便局の深夜窓口に最後の望みを託して駆け込んだら、その日は土曜日で早めに閉まってて(以下略)。
これからファンタジア大賞へ応募する方たちへ、メッセージをお願いします。
案ずるより産むが易しという言葉がありますが、これは小説にも当てはまります。書いている最中に「これは本当に面白いのだろうか」と悩むこともあると思いますが、まずはとりあえず書き上げてみましょう。あとでいくらでも直せます。もっとも避けるべきは、駄作を書いてしまうことではなく、途中で諦めてしまうことです。
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